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【インタビューNo.7】堺飛鳥氏(東京大学社会連携本部渉外部門シニア・ディレクター)

2022/9/1

外資系企業、広告代理店、大学院での組織文化の研究と幅広くご経験され、現在は国立大学法人東京大学にてファンドレイザーとしてご活躍されている堺飛鳥氏(東京大学社会連携本部渉外部門シニア・ディレクター)に、お話をお伺いしました。

 

インタビュアー 樽本 哲

 

どこまで寄付者の気持ちに寄り添えるか
研究者が研究に集中できる環境を 

 

―多くのご経験を有する堺さんですが、現在の職に就かれるまでの経緯をお聞かせください

大学を卒業後、外資系企業を経て日本企業の広告代理店に勤めたときに、文化の違いに驚くとともに、ジェンダーの考え方の違いに大きなカルチャーショックを受けました。女性が社会で働くとはどういうことなのかについて研究したいと思い、大学院の修士・博士課程に進学し、日本の女子労働と組織文化についての研究に取り組みました。

ちょうどその頃、結婚して子どもが生まれて、夫の地方転勤によるライフスタイルの変化などもあり、研究がなかなか進まないジレンマに陥っていました。、最終的に、夫の海外転勤がきっかけとなり、大学院を中退して家族で海外に行くことにしました。

中国で4年ほど過ごして帰国した後、就職先が見つからず、派遣に登録をしたところ、家の近所であった東京大学(以下「東大」)にて、短期の職が見つかりました。そこで各大学が独自に職員の採用活動をしていることを知り、派遣契約が切れるタイミングで、東京工業大学(以下、「東工大」)に勤めることになりました。東工大では理学院の国際担当として海外からの教員やポスドク等の受け入れや、外国人教員の研究室の運営・予算管理を行っていました。

東工大の退職後、東大のファンドレイジングを担う社会連携本部渉外部門の採用募集があったので元々、ファンドレイジングに興味があったこともあり応募しました。未経験者ということもあり、結果は不採用でしたが、業務委託から始めてみないかとお声がけいただき、勤務することになりました。その後、職員として正式採用になり、今に至ります。

 

 

―女性のキャリア形成の難しさを物語るエピソードですね。大学のファンドレイジングという仕事に興味を持たれたきっかけはありますか

東工大に勤めているとき、教員が研究費を獲得するために多数のグラント(注:研究費の助成のこと)を探してきて、申請書を書いて、中間報告をして、研究成果報告を出して……と膨大な時間を費やしているのを見ていると、、その時間をもっと研究に回すことができたらなとすごく感じていました。わたし自身も修士・博士課程において研究費の獲得に困ったり、将来の不安を感じながら研究を続けていた経験があったからこそ、一層強く思いました。それをきっかけに大学はどうやって研究資金を集めているのかを調べていると“ファンドレイジング”という寄付を専門に集める仕事があるということを知り、ぜひそのような仕事をやりたいと思い始めました。

 

 

―大学に所属するファンドレイザーとして、寄付者とお話されるときにどういったことを大切にされていますか

寄付者の方のお気持ちに寄り添うことが大切だと思っています。入職して最初に携わったのが遺贈寄付でした。まだ悲しみの中にいらっしゃるご遺族の方から「(故人が)遺産をどのようにしたいのかというのは具体的にはわからないけど、大変お世話になった大学に寄付したいという気持ちがあった」と相談を受けました。

故人は卒業生でしたので、まずはご遺族の方にその方がどのような大学生活を送られていて、大学とどんな関係があったかをしっかり聞き取りさせていただきました。すると、その方がある運動系サークルに所属されていたことや、卒業した研究科で友人が教授をしていること、東大病院で病気の治療を受けられていたことなどが分かってきました。

そこで、後輩の育成という観点から所属していたサークルが使用している運動場の補修や、卒業された研究科の学生支援ができることをお伝えするとともに、苦労をされたご病気の基礎研究にも使っていただくのはいかがでしょうかと提案しました。

亡くなられた方やご遺族のお気持ちに寄り添いながら寄付の活用計画を組み上げていくことの大事さを学ばせてもらった事例でした。

 

 

―所属されている部署では生前の寄付についても担当されていますか。生前寄付の場合は寄付者とどのようなコミュニケーションをするのでしょうか

私は一定金額以上の個人の方からの寄付を取り扱うチームにいて、生前寄付ももちろん担当しています。生前寄付の魅力は、寄付したプロジェクトの過程や成果を寄付者向けの報告会や報道などで目にする機会が持てることです。寄付が実際に活かされているところを見て、自分で実感できるのは生前寄付の良いところで、それをお伝えするようにしています。

 

東京大学に寄付する魅力は
幅広い希望に応えられること

 

―施設の修繕や奨学金、研究費など、大学に寄付することの意味が理解できてきたように思います。堺さんから改めて東京大学に寄付する魅力を教えていただけますか

まずひとつ、東大のような大学は、団体が無くなる可能性が極めて低いことがいえます。遺贈寄付の場合でも、将来お亡くなりになった時に寄付先の東大が存在しないということはありません。二つ目として、大学への寄付は実は活用範囲が非常に広く選択肢が無限にあります。NPOの場合は目的のために寄付の使途はかなり具体的に細かく決められているかと思いますが、大学への寄付はその資金でできることがものすごく幅広いことが特徴です。特に、東京大学は総合大学で、理系から文系まで様々な分野がありますので、寄付者が興味を持たれる分野にお応えできないことはほぼありません。

例えば「子どもや次世代を支援したい」と言われれば、直接的な東大生への奨学金の寄付という形もあれば、社会にうまくなじめない子どもたちの才能を伸ばす研究や、教育格差問題などの社会問題に取り組んでいる研究への助成という形も可能です。あらゆるご要望とご相談に対して、具体的な複数のご提案ができることが、東京大学への寄付の魅力だと思います。

様々な支援プロジェクトを東京大学基金ウェブサイトに掲載していますが、それ以外に各学部、各研究室等へのご支援も可能ですし、こんなことに支援をしたいができるだろうかとご相談いただきましたら、ニーズに基づいてご提案を差し上げております。ぜひお気軽にお問い合わせいただければと思います。

 

 

―東京大学を支援することで社会にどのような影響があると考えていらっしゃいますか

東京大学が社会のために提供できる最大の価値は、研究や教育を通じて、社会や世界全体の仕組みを、より広く、より良い方向に変えていけることです。例えば子ども支援でいえば、今現実に困難に直面している子どもたちを助けるために、非営利団体などが支援活動を行なっています。東京大学の教育・研究活動へのご支援は、そのような直接的な支援ではないかもしれません。ですが、その困難を社会問題として一般化して問題提起し、問題を生み出さない新たな仕組みや制度を提言したり、最新の技術開発で問題を解決することや、その問題にあたる専門的な人材を生み出すことによって、長期的に社会課題に取り組んでおります。間接的ではありますが、社会的なインパクトが大きい。それが大学をご支援いただく魅力かと感じます。

 

 

 

―寄付には様々な手法がありますが、具体的に寄付の使途や方法を指定した方が良いのでしょうか

使途や活用方法を指定してご寄付してくださるのも嬉しいことなのですが、使途を大学に一任していただく寄付(一任寄付)が、実は最もありがたいです。一任寄付は、大学の財務基盤を安定させ、弾力的に運用や使用ができるお金となっております。具体的に使途を指定されたご寄付はそれ以外に使うことはできませんので、目まぐるしく世の中の状況が変わるなかで、必要性に応じて使用ができる一任寄付は、大変ありがたいものなのです。寄付文化が根付いている米国のトップ大学では、基金の残高が数兆円にのぼり、その運用益で毎年数百億〜数千億の運営資金を得ています。その財務基盤を基に、最先端の研究を行い、教育環境を整え、世界中から優秀な人材を確保するというグッドスパイラルを築いているのです。東京大学の基金規模は米国と比べれば数十分の一ですが、今後は、米国大学の基金規模を目標に、国の予算状況に左右されない独自の財務基盤を作り上げていきたいと考えています。研究環境と教育環境を充実させ、世界で最先端の研究を生み出し続けるためにも、ぜひ皆様にご寄付いただければ幸いです。

 

 

若手研究者を支える仕組み
エンダウメントを充実させたい

 

―まだファンドレイザーとしてスタートしたばかりだと思いますが、今後成し遂げたいことや夢について教えてください。

まだまだ東大が寄付を必要としているとということが知られていません。日本で最高峰の大学の一つで国立大学ですし国からの予算は潤沢でしょ?サポートがなくてもいいんじゃないかと思う方々も多くいます。実際には、国からの予算は削減傾向で、常勤(任期がなし)ポストが減って任期付きの特任教授が増えてきています。特に危機感を持っているのは、やはり基礎研究です。最初に申し上げたように、教員が短期的な成果を出していかないと次の資金を確保できない状況になってきており、長期的に取り組むべき基礎研究などに十分なリソースを割けていないのが現状です。その結果、ノーベル賞をもらえるような研究成果に結びついていっていない。。それらを長い目でサポートできるような仕組みを作っていきたいと考えています

そのために最近はエンダウメント(注:寄付金を積み立てて基金とし、その運用益を大学運営に役立てる仕組み)を重視しています。大学の寄付を集めてすぐ使っていくと、常に資金がなくなり自転車操業のようにになってしまうので、まず安定的な財政の基盤を作っていくことが重要だと思い取り組んでいます。財政の基盤ができれば、研究者を継続的に雇えたり常勤のポストを1個増やせたり様々なことができるようになります。企業の寄付は共同研究や産学連携に用いられることが多いため、エンダウメントの充実には個人の方からのご寄付が非常に大事になってきています。

 

 

―キフタントでは、寄付はしたいけれど何から始めて良いかわからないという方に出身大学への寄付を選択肢としてお伝えしています。より多くの人に大学に寄付する魅力が伝わる方法はありますか

そうですね。東大では、1年に1回活動報告会を開催していて、あのプロジェクトでは今こんなことをやっています、というようなご報告をさせていただいております。アーカイブ配信もするなど情報開示には力を入れていますので、ぜひご覧いただけたらと思います。我々ファンドレイザーも、教員から研究の話を直接聞くと引き込まれあっという間に虜になって、すごい研究だ!ここに寄付したい!と思うんです。ぜひ東京大学基金のYoutubeチャンネルにアクセスしていただければと思います。

 

 

―うちの大学では寄付者の想いをこのような形で実現しました、というような事例集やパンフレットがあれば、キフタントの顧客に紹介できると思います。東大にはぜひ作っていただきたいと思います。最後に、私の弁護士としての活動やキフタントのサービスについて、アドバイスやご感想があればお聞きしたいです。

東大はいま最先端の研究と知見の蓄積によって、世界の社会課題の解決に取り組もうとしています。キフタントが関わられている寄付者の方々は、日本や世界の変化を敏感に感じ、これから社会がどこに向かっていくべきかに関心を持つ方が多いのではないかと思います。キフタントには、そういったフィランソロピー精神がある方々との橋渡しをしていただき、よりインパクトを広げていくサポートをいただければ大変嬉しいです。

また日本では、まだ寄付文化が根付いておらず、寄付をご経験していない方も多いため、寄付に対して不安を持っていらっしゃる方も多くおられると思います。そのような中、弁護士の方が運営している中立な立場のキフタントというメディアは、大変信頼性があると感じます。今後も読者の不安を解消し、日本の寄付文化を盛り上げていくメディアとしての発展を期待しています。ぜひ東京大学ともコラボしていただければと思います。

 

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