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【インタビュー】若林朋子氏(キフタント外部アドバイザー)

2021/4/9

 

助成プログラム開発や非営利団体の運営、企業による社会貢献支援など、芸術・文化の視点で社会デザインに取り組まれているキフタント外部アドバイザーの若林朋子氏(プロジェクト・コーディネーター/プランナー/立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科特任准教授)に、お話を伺いました。

 

                            インタビュアー 樽本 哲

 

専門は芸術と文化領域    多岐にわたる業務で培った経験

 

-現在、芸術・文化の視点から、企業財団の助成プログラム開発や企画立案、執筆など、さまざまな分野で活躍されている若林さんですが、この分野に取り組まれたきっかけや経緯をお聞かせください。

 

大学卒業後、社会人を経験したのち、大学院に入って文化政策を学びました。その経験を生かせる職を探してたどり着いたのが、芸術・文化領域の支援に特化した組織である、公益社団法人 企業メセナ協議会(以下、協議会)です。

15年ほど在籍させていただきましたが、主な支援内容は三つ。一つめは、企業の社会貢献で行われる文化活動や文化支援活動のサポート。二つめは、アーティストの支援活動。環境を整えて、企業とアーティストのしあわせな出会いをつなげる仕事です。三つめは、社会を構成する一人ひとりのみなさんに対して、活動のお知らせや参加する方への支援です。

 

-企業、アーティスト、そして社会や人々に向けてと、大きく三つのベクトルがあるんですね。それがきちんとクロスして出会えるように、仕組みや枠組みづくりをされていたと。

 

さらには、広報普及活動の中で、冊子づくりやアドボカシー活動として、政府へ政策提言のアドバイスもさせていただきました。小さな組織なので、経理以外は本当に何でもやりましたね。協議会として、そして個人としても経験を積むことで、できることがどんどんと広がっていきました。

 

分業ではなく全てを担う  プログラム・オフィサーの仕事

 

-協議会では、幅広い分野でお仕事をされていたんですね。読者の中には、助成のプログラムを担う、プログラム・オフィサーについて初めて触れる方も多いと思うので、仕事内容や使命を教えていただけますか?

 

狭義では、「助成金のプログラムを担う人」というイメージかもしれませんが、私の考えるプログラム・オフィサーはそれだけではありません。資金集め、プログラムの企画立案、実施、検証、次年度の計画まで、全責任を担う人がプログラム・オフィサーなんです。

使命とは、関係するさまざまな人にとっての最適な状態づくりですね。

 

-担当した事業を最初から最後まで回し、次年度への循環を作る人が、プログラム・オフィサーなんですね。その中で、課題を実現しようとすると、地域や行政など、多くのステークホルダーが関わってくると思いますが、調整はどなたがされているんですか?

 

現場では、企業と行政、地域住民、アーティストなどがうまく動くように、NPOなどの民間団体がそれぞれを結んでいました。芸術・文化分野の取り組みは、幅の広さが特徴の一つです。展覧会やコンサート、川柳のコンテスト、食文化や庭園文化の普及など、さまざまなタイプの支援がありました。企業の行うメセナ活動で一番多いジャンルは音楽、その次に美術でしたね。その他、演劇やダンス、建築、伝統芸能、生活文化などの活動もありました。

私が活動を通して実感したのは、いわゆる発表の場である展覧会やコンサートは、創造のプロセスでは最終工程。以前は発表の場を支援していくのが主流でしたが、活動が定着してくると一番困っているのはそれに至るプロセスだと気が付きました。例えば、稽古場を借りるお金だったり、ワークショップの場所だったり。そこで、だんだんと企業が工夫を凝らしてプロセスも支援するようになりました。

 

人をつなげることの大切さ  社会の見方が変わる出会いづくり

 

-もちろん、大小の違いもありますし、全国各地、いろいろな事例がありますよね。さかのぼっていくと、アーティストの育成やこどものアート体験にも広がっていくのではないでしょうか。

 

そうなんです。芸術や文化の支援は、出口ではなく出会いづくりが大切です。例えば2000年の初頭から、芸術家が学校教育の中に入っていくプログラムが盛んになりましたが、最初にサポートしてくれたのは企業でした。障害のある方の芸術活動をいち早く応援してくださったのも企業です。

発見してきた課題・ニーズが本当に必要とされていたんだと感じられた時に、すごく手応えを感じますね。

 

-キフタントも同じような役割で、たくさんの出会いをつくって、やりたいことの実現を目指し、調整しつなげていくことが使命だと思っています。キフタントの外部アドバイザーとして、非常に心強い若林さんですが、協議会を退職された後の活動を教えてください。

 

2013年に退職して8年になります。残りの仕事人生を考えた時、今までの経験を生かしながら、自分がやりたいことに全集中できる環境に身をおきたい、と決断しました。自分で考え、すべてを判断するフリーランスになろうと腹が決まったんですね。今は、コーディネートや調整の仕事がメインです。

加えて、2016年4月から立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科で特任准教授をしています。学際的な社会人大学院で、教員も院生もさまざまな研究分野の方がいるおかげで、視野がとても広がりました。社会デザインというのは「こうだったらいいな」と思う社会をいかに設計し実装するかがテーマです。その中で社会課題だけではなく、価値創造という側面から、切り口が無数にあるとことが見えてきました。

キフタントも、今後さらにいろいろな社会領域の方をつなげていくと思いますが、社会の見方が変わるような出会いを作ることができたら、と強く思っています。

 

災害や社会状況で大きく変化   必要な支援を迅速かつ的確に

 

-東日本大震災や新型コロナウィルスがあり、社会状況が変化することによって、芸術・文化の支援方法も大きく変わってきているのではないでしょうか?

 

そうですね。一旦、協議会の話に戻ってしまいますが、私がまだ入る前の1994年のこと。NPO法がなかった時代に旧大蔵省とかけあって、助成認定制度を作ったそうです。特定公益増進法人の協議会に、企業や個人の方から一旦寄付をしていただき、そこから法人格のない実行委員会や小さな芸術団体に寄付されたお金を分配する。協議会を通すことで寄付者は税制優遇が受けられ、芸術団体は資金を集めやすくなる、というシステムですね。

この制度の運用実績が、東日本大震災の時に立ち上げた、芸術・文化の復興支援ファンドで大変役に立ちました。ファンドという名前ですが、いわゆる助成金です。協議会に寄付をいただいてお財布をつくり、申請のあった被災地の文化団体や、活動支援団体を助成していきました。

 

-東日本大震災後、2週間後に復興支援ファンドを立ち上げられたそうですね。祭りや郷土芸能はその土地でしかできないものです。東北は郷土芸能の宝庫だと思いますが、具体的な支援内容を教えてください。

 

プログラミングに加えて、書類の受付と精査、助成金を出す業務をしていました。避難所の体育館からファックスが送られてきたり、津波で焼失してしまった装束や獅子頭など郷土芸能の道具の案件であったり、最初は申請書を読みながら、涙が頬を伝っていました。文化継承の危機を肌で実感し、緊急支援で何とか助成金を出そうと、ぎりぎりでふんばっていましたね。

実際に東北に出向き、本番を見たり、寄付がどのように使われているかを確認しレポートを作成、世の中や寄付者にお知らせしていくような仕事をしていました。生命の維持を支援するだけではなく、日常の一部だった催事や芸能の灯を消さず、避難先から故郷に戻れた時に、文化がきちんと引き継がれるようサポートすることが大切だと気づかされました。

 

-昨年からの新型コロナウィルスの影響で、文化や芸術分野も大変な状況だと感じています。

 

2020年は、新型コロナウィルス関係で、助成プログラムの立案を二つお手伝いしました。どのようなプログラミングをしたら良いのか、東日本大震災での経験が大いに役に立ちましたね。経験は生きています。

コロナ禍での助成金の仕組みづくりは、大きな節目ですが第二弾も近々実施予定です。アンケートを取り、それを生かしながら設計していく。お金を出す側と受け取る側のやりとりに接する中で、非常に手ごたえを感じています。民から民への、よいお金の循環づくりに携わることができて、とても幸せです。

 

人生のOSづくりの栄養はアート   一歩踏み出すお手伝いを

 

-最後に、個人でのアートプロジェクトで、世の中の役に立ちたいという方にメッセージをお願いします。

 

新型コロナウィルスの影響により、芸術や文化に触れる機会が減っていく中で、気づきがありました。それはこれからの時代、一人ひとりが自分の生き方のOSを持つことが必要ではないか?という思いです。誰かに何かをしてもらうのを待っているのではなく、自分の判断基準で動かすOSを育てていくことが大事な時代が来るのではないでしょうか?その判断基準を養っていく、栄養分の一つが芸術や文化だと感じます。

 

私自身の経験ですが、アートとの出会いは人生を変える。つまり、人生の向き合い方が変わるんです。新たな価値創造が上手なのはアートだと思います。個人個人が持つ「こんな風だったらいいな」「こういう風に生きたいな」という思いのOSを持つお手伝いを、芸術・文化の面からサポートしていくのが私の仕事です。企業だけでなく、行政、NPOなど、多くの方々と時間を共にする中で、さらに活動を広げていきたいと思います。

寄付を通してアートと出会うことで、今までとは違う人生が待っているかもしれません。一歩踏み出していただければ、きっとアートを身近に感じていただけるはずです。少しでもご興味あれば、ぜひキフタントにお声がけください。心よりお待ちしております。

2021年2月12日 インタビュー

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