キフタント

インタビューInterview

HOME > インタビュー > 【インタビューNo.1】横田健一氏(キフタント外部アドバイザー)

【インタビューNo.1】横田健一氏(キフタント外部アドバイザー)

2021/2/7

キフタント外部アドバイザーで、資産形成ハンドブックの著者の横田健一氏(株式会社ウェルスペント代表取締役、ファイナンシャルプランナー)からお話を聞きました。

はじめに

樽本 横田さんは、2018年1月に41歳で大手証券会社を退職後、株式会社ウェルスペントを設立し、ファイナンシャルプランナー(以下「FP」)として活躍されています。FPとして普段はどのような仕事をしているのですか。

横田 ご存知のとおり、FPの資格は民間の資格で、士業のような独占業務があるわけではありません。FPと名乗っていても事業やサービスの内容は様々ですが、代表的な業務は講師業、執筆業、相談業の3つだといわれています。私は、より多くの方に、貴重なお金や時間をウェルスペント(well spent)していただくことで、より幸せな人生を送っていただきたいという創業時の思いから、これらの業務にバランスよく取り組むようにしています。

樽本 横田さんは、お金や資産形成の専門家として、情報発信に熱心に取り組んでいるという印象がありますね。その点は後ほどうかがうとして、前職の証券会社ではどのような仕事をされていたのですか。

横田 私が理系の院卒ということもあって、入社後は金融工学をベースにした、仕組債などの金融派生商品、デリバティブの商品開発の仕事がメインでした。金融工学で用いる計算式は物理法則の公式などが使われていて、学生時代に学んだ知識を活かすことができたので、楽しかったですね。証券外務員や証券アナリストなどの資格は一通り持っていましたが、いわゆる営業は法人・個人とも一度もしたことはなかったです。

樽本 そのまま会社員を続けることもできたと思いますが、正反対の世界に飛び込もうと思ったきっかけは何ですか。

横田 もともと40歳になったら別の仕事をしたいと考えていて、資格を活かして独立しようと思ったときにFPを選びました。前職では社外の人間とあまり関わらない仕事をしていたのですが、学生時代はジャグリングのサークルに所属して人前でパフォーマンスをしたりもしていたので、お客様対応も楽しみながらやっています。お客様のライフプランを一緒に考えて提案したことで喜んでもらえると、やりがいを感じますね。

資産形成

樽本 横田さんが執筆して常に情報をアップデートいるという「資産形成ハンドブック」は、人生とお金にまつわる情報がコンパクトにまとまっていていいですよね。ハンドブックの副題に「フツーの人にフツーの資産形成を!」とありますが、どういう思いでこれを書かれたのですか。

横田 「資産形成ハンドブック」は、私が講師業や執筆業に取り組む中で作成した発表資料や原稿をもとに、これから資産形成に取り組もうと考えている若い世代や、退職後の生活設計を考えるミドル世代に伝えたいお金に関する情報をまとめたものです。幸せな人生を送るうえでお金の問題は避けては通れませんが、体系的に学ぶ機会はほとんどなく、気軽に相談できる相手もいないため、多くの方が真剣に考える機会を持てていないと感じています。資産形成は決して一部のお金持ちのためのものではなく、普通の会社員の方も人生設計の一部として取り組むべきものだと思います。そういった思いでこのハンドブックを作り、ウェブサイトでも公開しています。随時更新しているので、多くの方にご覧いただけたらうれしいです。

樽本 横田さんご自身も投資の経験は豊富なのですか。

横田 私も3年前までは普通の会社員でしたが、給料の一部を使って20代のころから不動産投資を始め、投資信託の積立など、身の丈にあった投資を通じて、地道に資産形成の経験を積んできました。そういった経験もお客様との相談のときなどにお伝えするようにしています。

樽本 実際に経験されているということであれば、安心して相談ができますね。普通の会社員以外に、金融資産1億円以上の富裕層と言われるような方からも相談を受けることがありますか。

横山 そうですね。企業経営者や個人事業主、資産家、富裕層といった方々からの相談も受けています。ただ、多額の資産をお持ちの方は、絶対数が少なく、金融機関のウェルスマネジメント部門がサポートしていることが多いので、件数としてはそれほど多くはありません。私の顧客の7割程度が給与所得者だと思います。最近は共働き世帯が増加しているため、夫婦で相談に来られる方も増えています。住宅購入やお子様の教育資金、老後の資金をどうするかといった相談が多く寄せられています。定年退職を間近に控えた方から、退職金の使い道や資産運用について相談を受けることも多いですね。

樽本 相続や資産承継についての相談も受けているのですか。

横田 はい、受けています。将来の相続に備えて生前贈与を考えたい、相続対策のために資産の組み換えを検討したいといった相談があります。ただ、ウェルスペントで受けるのは相談とライフデザインの提案までで、商品の提案や販売の代理などは行っていません。それをしてしまうと、手数料収入を得ることが目的化してしまい、お金の相談を通じてお客様の幸せに貢献したいという創業時の思いから遠ざかってしまうと考えるからです。

お金の見える化

樽本 昨年8月に開催したキフタントのキックオフイベントで、横田さんは「お金の見える化」についての話をしてくれました。どういうことなのか、もう少し詳しく教えてください。

横田 老後の生活に心配がないくらい蓄えがある人でも、将来に不安を抱いているという方はたくさんいらっしゃいます。分からないから怖いのですね。「自分には資産がこれだけあって、将来の生活や次世代へ残すことを考えても、好きに使える金額はこれだけある。だから趣味や寄付、社会貢献にこのくらいは使っていこう」などと思う方は少数派です。

樽本 そういった方に、相談を通じて、お金の見える化のお手伝いをされているわけですね。

横田 そうです。今ある財産や今後の収入をどのように活用すれば将来の生活費やライフイベント資金といった資金需要に備えることができるのか。それを整理して提案することができるのは、FPの強みであり、使命だと思っています。

樽本 昨年、私は弁護士としての業務で、4件の遺贈寄付の遺言作成に関わりましたが、そのうちのお一人がやはり同じことでお悩みでした。住居も保険も預金もあるけれども、長生きしたときに子どもや孫に残したい財産以外にどのくらい余裕があるのか、相続税はいくらかかるのかといったことが分からないので、寄付や社会貢献に興味があっても、なかなか遺言作成に踏み切れないということでした。

横田 お気持ちはよくわかります。

樽本 その方は幸運にも自力で親切なFPさんにたどり着き、生涯の資金計画についてアドバイスをもらい、税理士にも相談できたことで、現在と将来の「お金の見える化」に成功し、安心して遺言を作成することができました。

横田 自分らしいお金の使い方ができると、人は幸福を感じるそうです。その方もきっと満足されたのではないかと思います。私の顧客の中に、子どもがいないので財産は社会のために遺したいという方がいます。自分のためと考えると、今以上に資産を増やす必要はないけれども、遺せる金額を増やすために目標を立てて資産運用をする、そういう生き方があってもいい。「お金を見える化」することで、様々な意思決定がしやすくなるのではないでしょうか。

日本人のお金の課題

横田 日本人はお金を有意義に使っていない、ウェルスペントできていないなと思うことが3つあります。

樽本 なるほど。具体的には?

横田 一つ目が約1900兆円と言われる日本の個人金融資産です。5割以上を預貯金として持っているというのはすごくもったいないことだと思います。

樽本 よく言われていることですね。日本人は貯金好きと言われていますね。

横田 はい。そして、二つ目がこんなに国民皆保険・皆年金で社会保険が充実している国なのに民間の生命保険に入りすぎている点です。漠然とした不安があったり社会保険制度を理解していないがために、民間の保険に頼ってしまう。例えば高額療養費制度といった制度すら知られていません。また、制度の名前を聞いたことがあったとしても、ご自身の自己負担限度額を知っている人はほぼ皆無といった状況なので、すごくもったいない状況だと思います。

樽本 確かに、自分の自己負担限度額がいくらになっているか、というのは知らないかもしれないですね。

横田 そして三つ目が高齢者に資産が偏在していること。寿命が伸びるのは基本的にいいことだと思うのですが、それによって30~ 50代といった子育てにお金がかかる若い世代の方にお金が移転されていません。高齢者が80代、90代とより長寿化して、相続が発生したときに受け取る方は60代とか70代。あと15年、20年早く受け取っていれば、あの時苦労しなくて良かったのにみたいな話があるのではないかと考えています。そういう意味で二世代にわたるライフプランというかマネープランを確認し、「見えるか化」することで、お子さんがいる家庭であれば相続よりも前の生前に贈与を組み入れていくことでお金をより有意義に使い(ウェルスペント)、2世代全体にとっての幸せを最大化できるのではないかと思っています。ある程度歳をとってから、例えば60代とか70代で相続して受け取っても「今更使うものがあまりないな」というようになるんじゃないかと思います。

樽本 確かにそうですね。これは高齢化が進む日本だけの課題なのでしょうか。

横田 これは国によってその事情は異なると思います。例えば、以前大前研一さんが「イタリア人ってうまくお金を使い切って死ぬ。死ぬタイミングではお金がほとんどゼロになるよう上手くちょうど使い切って死ぬ。日本人は世帯主の年齢階級別の資産額の統計でみると高齢者が一番お金を持っている。亡くなるときに一番お金を持っており、一番お金持ちで死ぬ。そういう人生ってどうなんだ。」というようなことおっしゃっていました。ちょうど最近「DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール」という、死ぬときまでにお金を全部使い切るという本の日本語版が出てまして、(実は僕自身まだ読んでないですけど)コンセプト的に近いなと思っています。

樽本 興味深いコンセプトだと思います。親の世代がそうだったように、子孫に家や土地を遺すことが自分の役割だと考えているシニアの方はまだまだたくさんいるように思います。一方で少子化によって承継する相手がいない方も増えていますね。

横田 結局お金は自分が生きている間しか使えないし、意思決定もできません。結局使い切らずに、もしくは渡したい人に早めに渡すことなく死んでしまって、初めて資産が移転されるというのがすごく勿体ないことだと思っています。もうちょっと生前に、少しずつでも、ご自身の子供じゃなくても親族や社会などいろんな人に還元しながらお金を使っていくのが良いんじゃないかと考えています。

キフタントへの期待

横田 日本はもったいないお金の使い方をしています。寄付文化がより身近なものになって国内に広まっていくといいなと思います。

樽本 私の知人に「寄付も消費と変わらない」と言っている方がいました。寄付を自分のお金を誰かにあげるものと思ってしまうから受取った側の人に対して厳しい評価を生んでしまうのだと。プレゼントではなく寄付という体験を自分が消費したと思えば、寄付先に払ったお金がどう使われようが、それは団体のモラルの問題になる。それくらいおおらかな寄付があってもいいのかもしれません。一方で、「寄付は未来への投資」と捉える方もいます。投資の成果が自分に返っては来なくても、目に見える形で次の世代に受け継がれることを重視する寄付のスタイルです。寄付の世界に正解はありません。自分がどういうお金の使い方をしたいのか、自ら考えて発見する必要があります。

横田 キフタントのフィランソロピー・アドバイザーは、それをサポートする役割ですよね。

樽本 そのとおりです。その方にあった形の寄付を実現することがキフタントのミッションです。簡単なことではないですが、横田さんら専門家の力も借りながら、これまで日本になかった形のサービスを作り上げていきたいと思います。最後に横田さんから何か伝えたいことはありますか。

横田 「お金の見える化」ですね。その整理さえすれば、やりたいことを具体的に実行しやすくなります。毎年健康診断を受けるように、お金の診断もぜひやっていただきたいと考えています。

樽本 本日はありがとうございました。

横田 ありがとうございました。

 

2020年12月3日対談

※撮影時以外はマスクを着用しました。

インタビュー一覧

▲Page Top

キフタント