【インタビューNO.8】奥村武博氏 (公認会計士、アスリートのキャリア支援)
2024/1/31
奥村さんは、アスリートのセカンドキャリアを支援する団体やスポーツ関連の起業家として活躍しています。奥村さんの人生は、まるでジェットコースターのようです。野球に夢中になり、阪神タイガースに入団したものの、ケガに見舞われ、飲食業界に転身しました。しかし、そこでも満足できず、公認会計士の資格を目指しました。そして、見事に合格し、公認会計士として活動しています。さらに、自分の経験を生かして、アスリートのキャリア支援やスポーツビジネスにも挑戦しています。奥村さんは、どうやってこれだけのことをやっているのでしょうか?どんな思いでスポーツと向き合っているのでしょうか?奥村さんの熱くて面白い話をお届けします(2023年8月31日)。
―公認会計士になるという難関を突破された奥村さんですが、そのきっかけはどのようなものでしたか?
私はプロ野球選手として阪神タイガースでプレーしましたが、ケガなどもありわずか4年で戦力外通告を受け、現役を引退しました。その後は飲食業界に転身したのですが、自分のやりたいことや目標が見つからず、焦りを感じていました。そんな時に、当時の彼女(今の妻)が資格ガイドをくれて、そこで公認会計士に興味を持ちました。高校時代に簿記の勉強をしていたこともあり、企業の数字を扱ってコンサルができるという仕事に魅力を感じました。また、公認会計士の制度が変わって大学卒業資格が不要になったことも、私にとってはチャンスだと思いました。そこで決心して勉強を始めたんです。
―公認会計士の勉強は大変だったと思いますが、どのように乗り越えられたのですか?
確かに大変でした。仕事をしながら勉強するのは時間的にも精神的にも厳しかったです。でも、野球選手時代に培った考え方や練習方法が役立ちました。野球でも自分が上達するためにはどうすればいいか考えて練習していましたが、会計士の勉強でも同じように問題を解くためにはどうすればいいか考えて勉強しました。野球と会計という全く違う分野でも、成長するためのプロセスは変わらないんだと気づきました。それが自信にもなりましたね。
-奥村さんは、プロ野球選手として活躍された後、社会貢献にも力を入れていますね。そのきっかけは何だったのでしょうか。
僕はプロ野球選手としてはあまり目立った活躍はできなかったんですが、それでも地方で野球教室を開いたり、母校で講演したりすると、子どもたちや地域の人たちがすごく喜んでくれるんです。それで気づいたんですよ。自分でもプレーを見せたり、話をしたりするだけで、人の人生に影響を与えられるんだと。母校の在校生向けに話をしている時に、僕の話を聞いてくれた後輩が、周りの反対を押して会計士にチャレンジしようと思い立って、会計士受験を見越して、その学校から誰も進学したことのない国立大学の受験を目指して勉強を始めて、見事合格したというケースがありました。うれしかったですね。
-スポーツは応援するだけで誰もが楽しめるという魅力もありますよね。
そうですね。まさに今年の高校野球で優勝した慶応高校はすごくわかりやすい事例ですけど、スポーツをやっていなかった慶応の卒業生の方々が甲子園を揺るがすくらい集まって盛り上がれるわけじゃないですか。高校生たちのプレーが輪を作るきっかけになっているんです。スポーツは社会をつなげる力があるんです。
―奥村さんは一般社団法人アスリートデュアルキャリア推進機構を立ち上げられています。どのようなきっかけがあって始めたのですか。
一般社団法人アスリートデュアルキャリア推進機構(下記「ADCPA」)はアスリートのキャリアを支援する団体です。私たちは仕事のマッチングではなく、予防療法的に「スポーツで取り組んできたことをこういう風に展開したらビジネスに活かせる。だったら、そのためにもスポーツをこういう風に取り組んでおいた方が良い。」というステップを踏むアプローチでスポーツ選手のキャリアのサポートをしています。
―ADCPAでは、現役アスリートの方にスポーツとの向き合い方やキャリアの考え方を伝えているんですね。
はい。現役アスリートはもちろん、引退した選手にも今までの経験を振り返って次のステップに進むお手伝いをしています。アスリートというとプロやトップレベルの人ばかりだと思われがちですが、学生さんも対象にしていますよ。高校や大学、中学生もいます。将来、トップアスリートになりたい人にも早くから知っておいてほしいことがありますし、学校から依頼されることもあります。実は、甲子園で優勝したこともある岡山東商業高校からもお声がけいただいて、近々講演に伺う予定なんです。
一般社団法人アスリートデュアルキャリア推進機構の取り組みをぜひご覧ください。
―奥村さんみたいな素晴らしいキャリアを持つ人から話を聞けるのは貴重ですね。他にも「この人はすごいな」と思うキャリアのロールモデルはいますか
会計士の分野で言うと、バスケットボールの岡田優介選手ですね。日本代表にも選ばれているすごい選手で、今でも現役で頑張っています。会計士試験と日本代表の遠征が重なってしまって試験が受けられなかったこともあったそうですけど、段階的な合格制度を上手く利用して見事に合格していました。アスリートは計画的に物事を進めたり、成果を積み上げていくことが得意だと思うんです。もちろん、意識的にやっている人とそうでない人はいますけどね。例えばプロ野球だと春のキャンプから秋の優勝を見据えて計画を立てて実行していくじゃないですか。ゴールを決めて逆算して今何をやるべきかを考えることはスポーツでは当たり前のことです。そういう意識がある人は岡田選手みたいに計画的にできると思いますし、それが大事だと思いますね。
-スポーツを通じて計画性や失敗から学ぶ力などを身につけることができるんですね。
そうですね。最近はスポーツの意味づけが変わってきています。計画性だけでなく、失敗から学んで次につなげる力やチームワークやコミュニケーション能力などもスポーツで学べますよね。樽本さんみたいに「子どもたちにスポーツをやらせたい」と思ってくれる親御さんが増えてくれれば嬉しいです。スポーツは社会貢献するための素晴らしいツールだと思っています。勝つことが全てではなく、スポーツの良さを伝えることができれば、もっとスポーツに触れる機会が増えて、スポーツ界全体のレベルも上がっていくと思います。それがスポーツの未来を広げることにつながると信じています。だから、アスリートの引退後のキャリアはとても重要なテーマです。高いレベルでチャレンジしたいアスリートには目指すべき姿があるはずです。そのためにブレーキをかけることがないようにしたいですね。
-キフタントでは、社会貢献をしたいけれど何から始めて良いかわからないという方にいろんな社会貢献の機会の多くの選択肢をお伝えしています。その中にはスポーツに関心がある方もいらっしゃいます。そのような方々にスポーツに関わる寄付をする魅力が教えていただけますか。
スポーツ界への寄付は金銭的なリターンを期待するのではなく、ストーリーに共感することが大事だと思います。スポーツ界はお金では測れない価値がありますからね。例えば、FC今治さんのスタジアムが今年の春完成したんですが、元サッカー日本代表監督の岡田武史氏のこんなスタジアムを作りたいという夢から始まったプロジェクトです。スタジアムを作るにあたって投資家の方々へのプレゼンでは、上場や株価や配当などの金銭的な話よりも、チーム強化はもちろん、試合のない日でも人が集まる街全体の活性化につながる場所を作りたいというストーリーに共感して出資してくれたんです。今治里山スタジアムはただのスタジアムではなくて、街の人たちの憩いの場であり、チームのシンボルであり、心の豊かさを高める場所なんです。そういうスポーツに関わる寄付は、自分のお金がどんな風に社会に貢献しているかを感じられると思います。
―様々な活動されている奥村さんはADCPA以外にも株式会社スポカチを立ち上げられています。どのような活動をされているのでしょうか。
スポカチは先ほどお話した資金調達をはじめとしたCFO業務支援や職業紹介・研修等を通じたアスリートのキャリア支援・教育事業を行う会社です。例えば、起業したい選手やチームに対して、資金調達の方法やガバナンスの整備などのコンサルティングを提供したり、職業紹介の免許もあるので、選手と企業とのマッチングも行ったりしています。ADCPAはマインド的なアプローチですが、スポカチは実務的なアプローチですね。サステナブルなスポーツ経済の創造、スポーツ界の価値向上を目指すという点では共通していますが。
―奥村さんの夢や人生の目標を教えていただけますか。
僕は自分が仕事をしたり話したりすることで、人の人生に影響を与えられるような生き方がしたいですね。あの人がいたから自分もこういう道を選んだとか、あの人みたいになりたいとかそういうふうに思ってもらえるような存在でありたいです。それがスポーツ選手の次のキャリアや人生を充実させるきっかけになったり、何か社会に貢献する仕組みづくりだったりすると嬉しいです。だからこそ自分も新しいことに挑戦し続けていきたいです。それが夢というか目標というか生き方ですね。
―奥村さんの熱い想いが伝わってきます。最後に、これから公認会計士を目指す方やアスリートのセカンドキャリアに興味がある方に向けて、メッセージをお願いします。
公認会計士は難しい資格ですが、やりがいのある仕事です。数字を通して企業の経営や社会問題に関われるというのは、とても魅力的だと思います。また、アスリートのセカンドキャリアも、自分のスポーツで培った能力や経験を活かせるチャンスがたくさんあります。どちらも挑戦する価値があると思います。私はその挑戦を応援していますし、サポートしていきたいと思っています。ぜひ一緒に頑張りましょう!
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